ビール、日本酒、ワイン、ウイスキー
──これらはいずれも「発酵」によって作られるお酒ですが、なぜかビールだけ炭酸が残っていることに疑問を持ったことはありませんか?
この記事では、ビールに炭酸が残る理由を中心に、他のお酒との製法の違いや、スパークリングタイプの酒類についても詳しく解説します。
ビールにはなぜ炭酸が残るのか?
ビールは、糖分を酵母が分解することでアルコールと二酸化炭素を生み出す「発酵酒」の一種です。この発酵過程で発生した炭酸ガスを閉じ込めるような製法がとられているのが最大の特徴です。
密閉された容器での発酵・貯蔵
ビールは一次発酵のあと、密閉タンクや瓶の中で二次発酵を行う場合があり、炭酸が自然に残るように設計されています。
また、多くのビールでは最終的に炭酸ガスを人工的に充填して調整するため、しっかりと炭酸が感じられるようになります。
冷温管理で炭酸をキープ
ビールは製造・輸送・保存すべての段階で低温管理されており、炭酸が抜けにくい状態が維持されています。
日本酒・ワイン・ウイスキーに炭酸が残らない理由
同じく発酵を経て作られる日本酒やワインには、なぜ炭酸が残っていないのでしょうか?
これらのお酒はいずれも発酵を経て作られていますが、製法の違いから炭酸が残りません。
特に、蒸留酒と醸造酒の違いを理解すると、なぜ炭酸が抜けるのかがよりクリアになります。
日本酒:火入れと熟成で炭酸が揮発
日本酒は発酵後に「火入れ」と呼ばれる加熱殺菌処理を行います。
この工程で炭酸は抜けてしまいます。また、貯蔵・熟成中も密閉されていないため、発生した炭酸は自然に抜けていきます。
ワイン:発酵後に開放容器で熟成
ワインも日本酒と同様、発酵後は樽やタンクでの熟成期間があるため、炭酸ガスは逃げてしまいます。特に赤ワインは炭酸を残さない設計になっています。
ウイスキー:蒸留により炭酸は除去
ウイスキーは発酵のあと蒸留という工程を経ます。
蒸留とは加熱してアルコール成分を抽出する方法で、この過程で炭酸は完全に除去されます。したがって、ウイスキーには炭酸が残らないのです。
スパークリングタイプのお酒との違い
実は日本酒やワインにも、炭酸を含んだタイプがあります。いわゆる「スパークリング酒」です。
スパークリング日本酒
スパークリング日本酒は、瓶内での二次発酵や炭酸ガスの注入によって作られます。開栓時に泡が立つほどしっかりと炭酸があり、フルーティで飲みやすいのが特徴です。
スパークリングワイン(シャンパン)
フランスのシャンパンは、瓶内二次発酵によって自然に炭酸が発生し、それをそのまま封じ込めています。これはビールと同様の炭酸保持の技術ですが、コストや工程が大きく異なります。
まとめ
- ビールは発酵時に発生する炭酸を閉じ込める設計で作られている。
- 日本酒・ワインは発酵後に開放・加熱処理され、炭酸は抜けてしまう。
- ウイスキーは蒸留酒であり、炭酸がそもそも残らない。
- スパークリング酒類は特別な製法で炭酸を保持している。
ビールにだけ炭酸が残るのは、偶然ではなく製法の違いによる必然なのです。