ウイスキーの製造工程と種類:専門用語を使わずにわかりやすく解説

お酒の知識
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はじめに

ウイスキーを深く理解する第一歩は、その製造工程と種類を知ることから始まります。

本記事では、ウイスキー製造の各ステップを、初心者にも理解しやすい言葉で詳細に解説します。

さらに、世界中で愛される様々なウイスキーの種類を紹介し、あなたの好みに合った一杯を見つける手助けをします。

ウイスキーの製造工程

ウイスキーの製造は、精密な工程と伝統的な技術が融合した芸術形式です。

本章では、ウイスキーがどのようにしてその独特の味わいを獲得するのかを明らかにします。

具体的には、以下の6つの主要ステップを詳細に解説します。

  • 製麦
  • 糖化
  • 発酵
  • 蒸留
  • 熟成
  • 調合

各工程がウイスキーの風味形成にどのように寄与しているかを理解することで、ウイスキーの多様性と複雑さが一層楽しめるようになります。

製麦(せいばく)

ウイスキー製造の最初のステップは製麦です。製麦は原料の大麦等を発芽させる工程です。

発芽させることで内部に酵素が生成されます。

【浸漬(しんせき)】
まず、原料を水に漬けて発芽を待ちます。

【焙燥(ばいそう)】
麦芽は成長しすぎると逆に酵素が失われていくため、適切なタイミングで麦芽を乾燥させて成長を止めます。

糖化(とうか)

糖化は麦芽内のデンプンを糖分に変える工程です。

まず製麦で発芽した原料を粉砕し、温かい仕込み水に混ぜます。
すると、麦芽内の酵素が働き、でんぷんが糖分に分解されます。

これをろ過して原料の殻などを取り除くことで、発酵に必要な糖分をたっぷり含んだ麦汁が出来上がります。

発酵(はっこう)

前工程で生成した麦汁に酵母を加えると、酵母が糖分を分解し、アルコールと炭酸ガスを生成します。

発酵後の液体をもろみと呼びます。
この段階でのアルコール濃度は約7%です。

蒸留(じょうりゅう)

蒸留工程では、もろみを蒸留器に入れてアルコール濃度を高めます。

まず、水(沸点100℃)とアルコール(沸点78.4℃)の沸点の違いを利用してアルコールだけを気化させます。

その後、気体になったアルコールを冷却して液化させることで、アルコールや香気成分などの揮発成分だけを抽出します。

抽出された液体をニューポットと呼びます。

単式蒸留器と連続式蒸留器

蒸留器は連続式蒸留器と単式蒸留器に大別されます。

連続式蒸留器は単式蒸留器よりも効率的にアルコール度数を上げることができ、それゆえ大量生産に向いています。

一方、一気に蒸留するためアルコール以外の成分が残りづらいです。
抽出液(ニューポット)も高濃度になるので、後工程でアルコール度数の調整に多くの水を加えなくてはならず、味に深みがなくなります。

熟成(じゅくせい)

蒸留で生成されたニューポットは、木樽の中で熟成されます。

熟成は10年~30年と長い期間をかけ、木樽のもつ木材独特の香り成分などをじっくりと馴染ませていきます。

調合(ちょうごう)

ウイスキー製造の最後の工程が調合です。

熟成された複数の原酒を調合し、目的の味を作っていきます。また、加水してアルコール度数を調整します。

調合する原酒の組み合わせによってウイスキーは様々な種類に分類されます。

ウイスキーの分類については次の章でご紹介します。

ウイスキーの種類:原料による分類と特徴

ウイスキーは使う原料によって様々な種類に分類されます。

今回は原料によるウイスキーの大分類(モルト、グレーン、ブレンデッド)をご紹介します。

モルト

モルト・ウイスキーは、原料に大麦の麦芽のみを使ったウイスキーです。

モルト・ウイスキーはさらに下記3種に分類されます。

  • シングル・カスク
    1つの蒸留所の1つの樽で製造されたウイスキー。
  • シングル・モルト
    1つの蒸留所のモルト原酒を調合して造られたウイスキー。
  • ブレンデッド・モルト
    複数の蒸留所のモルト原酒を調合して造られたウイスキー。

モルト・ウイスキーは原料由来の香りや味わいが色濃く残っているのが特徴で、蒸留所ごとの個性を楽しむことができます。

グレーン

グレーン・ウイスキーは、原料に穀物(ライ麦・トウモロコシ・小麦など)を使ったウイスキーです。大麦麦芽は原料全体を糖化させる目的で少しだけ加えます。

グレーン・ウイスキーは蒸留の過程で雑味がほとんど取り除かれるため、味に深みがなく単調です。

そのため、モルト・ウイスキーのように単体で飲まれることは少なく、主にブレンデッド・ウイスキー(後述)の原酒として利用されます。

モルト・ウイスキーがシングル・カスク、シングル・モルト、ブレンデッド・モルトに細分化されて数多くの銘柄が売られているのに対して、グレーン・ウイスキーはせいぜいシングル・グレーン(1つの蒸留所のグレーン原酒を調合して造られたウイスキー)くらいしか種別を見かけない気がします。

ちなみに、原料にライ麦を51%以上使ったものをライ・ウイスキー、トウモロコシを80%以上使ったものをコーン・ウイスキーと言います。

ブレンデッド

ブレンデッド・ウイスキーは、調合工程でモルト原酒とグレーン原酒をブレンドして造られたウイスキーです。

個性が強いモルト・ウイスキーを癖がないグレーン・ウイスキーに混ぜることで、親しみやすい味わいになっているのが特徴です。

ウイスキーの種類:産地による分類と特徴

前章では原料(大麦や穀物など)による分類をご紹介しました。

次は産地による分類(世界5大ウイスキー)をご紹介します。

世界5大ウイスキーは、生産量が多く、高品質かつ知名度が高い5つの国・地域で製造されているウイスキーのことです。

日本のウイスキーもその一つで、ジャパニーズ・ウイスキーとして世界中の人に親しまれています。

アメリカン(アメリカ)

アメリカン・ウイスキーはアメリカで製造されたウイスキーで、以下を準拠する必要があります。

  • アメリカ国内で製造
  • アルコール度数95%未満で蒸留
  • アルコール度数62.5%以下で熟成
  • オーク樽で熟成
  • 瓶詰め時のアルコール度数40%以上

経済大国アメリカで造られていることもあり、バリエーションが豊富です。

アメリカン・ウイスキーの中でも、以下を準拠したバーボン・ウイスキーが特に有名で、アメリカン・ウイスキーの代名詞になっています。

  • 原料の51%以上がトウモロコシ
  • オーク樽は内面を焦がした新樽を使用

バーボン・ウイスキーは、内面を焦がしたオークの新樽を使うことで、バニラやカラメルを思わせる甘い樽香が引き立っています。

有名なバーボン・ウイスキーとして、世界一売れているバーボン・ウイスキー『ジムビーム』や、その特徴的な赤い蝋燭で知られる『メーカーズマーク』、さらには世界の博覧会で5つのゴールドメダルを受賞した『I.W.ハーパー』があります。

>>ジムビームの実飲レビュー

>>メーカーズマークの実飲レビュー

スコッチ(スコットランド)

スコッチ・ウイスキーはスコットランドで製造されているウイスキーで、以下を準拠する必要があります。

  • アルコール度数94.8%未満で蒸留
  • スコットランド国内で3年以上熟成
  • 容量700L以下のオーク樽で熟成
  • 水および無味カラメル着色料以外の添加禁止
  • 瓶詰め時のアルコール度数40%以上

スコットランドではピート(植物や海藻などが長い年月をかけて堆積したもの)が豊富に存在し、製麦の焙燥工程(麦芽を乾燥させて成長を止める工程)でよく使用されます。そのため、スコッチ・ウイスキーはピート由来のスモーキーな香りが特徴的です。

また、ピートの性質は地域によって異なります。

例えば、アイラ島のピートは海藻を多く含んでおり、強烈な磯の香りが特徴です。ラフロイグ蒸留所のウイスキーは正露丸のような薬品臭が強く、その独特な風味で有名です。

アイリッシュ(アイルランド)

アイリッシュ・ウイスキーはアイルランドで製造されているウイスキーで、以下を準拠する必要があります。

  • アルコール度数94.8%未満で蒸留
  • アイルランド国内で3年以上熟成

スコッチ・ウイスキーと定義が似ていますが、アイリッシュ・ウイスキーはピートを使用しないため、原料本来のやさしい香りと華やかな味わいが際立っています。

さらに、スコッチ・ウイスキーやジャパニーズ・ウイスキーが2回蒸留するのに対し、アイリッシュ・ウイスキーは3回蒸留することが特徴であり、それによって雑味が少なく、さっぱりとした味わいになっています。

カナディアン(カナダ)

カナディアン・ウイスキーはカナダで製造されているウイスキーで、以下を準拠する必要があります。

  • カナダ国内で3年以上熟成
  • 容量700L以下の木樽で熟成
  • 瓶詰め時のアルコール度数40%以上
  • カラメル(色調整)や香味液の使用可

ウイスキーの香りは「原料の大麦や穀物」「製麦(焙燥)で使うピート」「熟成で使う樽」から付与されるのが一般的ですが、カナディアン・ウイスキーの場合は香味液(香味調整用ウイスキー、ワイン、ブランデーなど)を少し加えることが許されており、軽快でクセがなく非常に飲みやすいのが特徴です。

ジャパニーズ(日本)

ジャパニーズ・ウイスキーは日本で製造されているウイスキーで、以下を準拠する必要があります。

  • 日本国内で製造
  • 日本国内で採水された水を使用
  • アルコール度数は95%未満で蒸留
  • 日本国内で3年以上熟成
  • 容量700L以下の木樽で熟成
  • 瓶詰め時のアルコール度数40%以上
  • カラメル(色調整)の使用可

日本のウイスキー造りはスコッチ・ウイスキーを手本に、1924年頃から始まりました。他の国と比べて歴史が浅く、まだまだ新米です。

ジャパニーズ・ウイスキー最大の特徴は、サントリーやキリン、ニッカ(アサヒグループ)などの大企業が参入し、原酒造りから瓶詰めまでウイスキーの製造工程を一貫して自社で行なっていることです。

大企業のノウハウ・人材・資金力により、安定した品質、バリエーション豊かなウイスキーを提供し続けています。

なかでも「山崎」「白州」「響」は日本の3大ウイスキーと呼ばれ、世界中で愛飲されています。

>>山崎ウイスキーの実飲レビュー

>>白州ウイスキーの実飲レビュー

ジャパニーズ・ウイスキーのもう一つの特徴は、スコッチ・ウイスキーやアメリカン・ウイスキーと比べて規定が緩く、自由度があることです。

例えば、熟成に使う木樽はオークに限定せず、将来的に桜や杉を使える余地を残しているなど、各社が新しいウイスキーを試行錯誤しやすい環境が整っています。

まとめ

ウイスキーの製造工程は大きく6つ(製麦、糖化、発酵、蒸留、熟成、調合)に分けられます。

ウイスキーの種類にはモルト、グレーン、ブレンデッドがあり、それぞれ異なる特徴と味わいを持っています。

原料や産地によっても味わいが異なり、アメリカン、スコッチ、アイリッシュ、カナディアン、ジャパニーズの5大ウイスキーを紹介しました。

それぞれの国や地域の製法や特徴を理解することで、より楽しいウイスキーの選び方ができるでしょう。

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