日本酒の製造工程と種類:専門用語を使わずにわかりやすく解説

お酒の知識
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日本酒の製造工程

日本酒の製造工程は大きく13個に分けられ、各工程が最終的な品質に重要な影響を与えます。

今回は、日本酒の製造工程を専門用語を使わずに分かりやすくご説明していきます。

精米(せいまい)

収穫された米から外側の硬い殻を除去しただけの米を玄米と言います。

精米は、玄米の表面の層(米ぬか等)を削り取る工程です。

米ぬかには脂質やたんぱく質などの栄養素が多く含まれており、これらが日本酒の雑味になってしまうため、精米して取り除く必要があります。

削り残った米の割合を精米歩合(せいまいぶあい)といい、精米歩合が低いほど外層をしっかり削ったことを意味し、雑味が少なく風味がしっかり引き立った良いお酒とされています。

詳細は後述しますが、精米歩合は大吟醸酒、吟醸酒などの日本酒を分類する基準の一つです。

浸漬(しんせき)

浸漬は、精米した米は水で洗い、水に浸けて水分を吸収させる工程です。

水をしっかり含むことで、麹菌(こうじきん)や酵母(こうぼ)が活発になり、後工程の発酵効率が上がります

一方、水分を多く含み過ぎると味が薄まってしまうため、適切な水分量になるように調整が必要です。

前述した精米歩合が低い米(外層をしっかり削った米)は、浸漬の影響が大きく、厳密に浸漬時間を管理しなくてはなりません。

蒸し(むし)

蒸し工程では、米を蒸すことで米に含まれるデンプンが水分を吸収して軟化し、酵素によって糖に分解されやすくなります。これをデンプンの糊化といいます。

蒸す前のデンプンはβデンプン、蒸し後のデンプンはαデンプンと呼ばれます。

また、この工程には殺菌効果もあります。

蒸し工程を経た米は『蒸し米(むしまい)』と呼ばれます。

製麹(せいきく)

製麴は、蒸し米の一部を使って麹菌(こうじきん)を育てる工程です。

蒸し米にはデンプンを糖に分解する酵素が含まれていません。

そこで、蒸し米の一部に麹菌を撒き、温湿度を適切に管理し、繁殖させます。

麹菌が持つ酵素は、米のデンプンを分解し、発酵に必要な糖を生成します。

麹菌が十分に繁殖した米を『麹米(こうじまい)』と呼びます。

酒母(しゅぼ)造り

酒母造りは、発酵に必要な酵母を育てる重要な工程です。

蒸し米、麹米、水、酵母を混ぜ合わせます。

ここに乳酸菌を加える(または自然発生)と、液体は酸性になり、不要な雑菌が増殖しづらくなります。酵母は酸性に強いため、繁殖し続けます。

酵母が十分に繁殖した液体を『酒母(しゅぼ)』と呼びます。

もろみ仕込み

もろみ仕込みは、酒母に蒸し米、麹米、水を三段階に分けて徐々に加えることで、もろみを造る工程です。

この方法は『三段仕込み』と呼ばれ、段階的に原料を加えることで、酵母の数、酸、アルコール濃度が急激に変化することを防ぎ、雑菌の繁殖リスクを低減します。

三段仕込みを行うことで、酵母が最適な環境で活動を続け、結果として品質の高い日本酒が製造されます。

発酵(はっこう)

もろみ仕込みが完了すると、本格的な発酵プロセスが始まります。

この段階では、麹菌がデンプンを分解して糖分に変える役割を担います。その後、酵母がこの糖分をアルコールと二酸化炭素に変換します。

上槽(じょうそう)

上槽は、発酵が完了したもろみを搾り、液体と固形成分に分離する工程です。

この工程で搾り出された液体が日本酒となり、残った固形成分は酒粕(さけかす)として回収されます。

酒粕はその栄養価と保健効果から、美容製品や健康食品、さらには料理の材料としても活用されています。

上槽工程で使用される目の粗い布による簡易的な濾過では、日本酒に濁りが残ります。
この段階での日本酒は『濁り酒(にごりざけ)』と呼ばれ、特有の白濁した外観を持っています。

滓引き(おりびき)

滓引きは、濁り酒から濁りを取り除く工程です。

上槽後の濁り酒をタンクに一定期間放置すると、重力の作用で固形物が底に沈んでいきます。この過程で沈殿した固形物を『滓(おり)』と呼び、これを除去することで日本酒から濁りを取り除きます。

具体的には、沈殿物を避けるために、タンクの上部に浮かんだクリアな液体だけを慎重に抽出します。

濾過(ろか)

濾過は、滓引き後の日本酒をさらに綺麗にする工程です。

滓引きを経た日本酒をフィルターや活性炭(物質の吸着効率を高めた炭)を使用して濾過し、さらに精度の高い清澄化を目指します。

フィルターは微細な不純物を物理的に取り除き、活性炭は不要な色や香りを吸着し除去することで、最終的に澄んだ透明な日本酒が完成します。

この濾過プロセスは、日本酒の風味と外観の品質を向上させるために重要です。

火入れ(ひいれ)

火入れは、濾過後の日本酒を加熱処理することにより、残存する微生物を殺菌し、日本酒の品質を安定させる工程です。

通常、火入れは60℃以上で短時間行われます。この過程を経ることで、日本酒の長期保存が可能となり、風味の変化も抑えられます

一方、火入れを施さない日本酒は『生酒(なまざけ)』と呼ばれ、そのままのフレッシュな状態で瓶詰めされます。生酒は加熱処理をしていないため、元々のフルーティーでフレッシュな風味が強調されますが、保存期間は短く、低温での保管が必要です。

貯蔵(ちょぞう)

火入れ後の日本酒は、飲み頃の味わいまで熟成させるために、一定期間タンクで貯蔵されます。

貯蔵環境(温度、湿度、容器の材質など)は、日本酒の最終的な品質に大きく影響を与えます。

調合(ちょうごう)

日本酒製造の最後の工程は調合です。

異なるタンクの日本酒や異なる年代の日本酒を調合し、目的の味を作っていきます。また、加水してアルコール度数を調整します。

日本酒と焼酎の違い

皆さんは日本酒と焼酎の違いをご存じでしょうか?

どちらも日本の伝統的なお酒ですが、原料や製造方法に大きな違いがあります。

ここでは、その主な違いを2つ解説します。

原料が違う

日本酒は主に米を原料として製造されます。

一方、焼酎は米だけでなく、芋、麦、黒糖などさまざまな原料から作られることがあります。

これらの原料はすべてデンプンを含んでおり、発酵過程で糖に変えられ、最終的にはアルコールに変換されます。

原料によって焼酎はさまざまな種類に分類され、米焼酎、芋焼酎、麦焼酎などがあります。

製造方法が違う

日本酒と焼酎の製造方法は根本的に異なります。

日本酒は醸造酒であり、発酵させたもろみを搾って液体成分を抽出します。

一方、焼酎は蒸留酒として分類されます。
焼酎の製造では、発酵させたもろみをさらに蒸留します。

蒸留は、水(沸点100℃)とアルコール(沸点78.4℃)の沸点の違いを利用して、アルコールと他の揮発成分だけを気化させ、それを冷却して液化させるプロセスです。
この蒸留工程により、焼酎は日本酒よりも高いアルコール度数を持つことが一般的です。

日本酒の種類

普通酒

普通酒には製法や精米歩合(玄米を削った後の残る割合)に特別な制限が設けられていません。

米、麹菌、水に加え、香りを付けるための醸造アルコールの添加が許可されています。

特定名称酒

特定名称酒は、製法や精米歩合、原料に関する厳格な基準が設けられており、これにより純米酒、吟醸酒、本醸造酒といった高品質な日本酒に分類されます。

純米酒、吟醸酒、本醸造酒の分類基準は以下の通りです。

種類原料製法精米歩合
純米酒米、麹菌、水指定なし指定なし
本醸造酒米、麹菌、水、醸造アルコール指定なし70%以下
吟醸酒米、麹菌、水、醸造アルコール吟醸造り60%以下
※50%以下は大吟醸

純米吟醸酒と純米大吟醸酒

純米吟醸酒と純米大吟醸酒は純米酒の基準をベースに、それぞれ吟醸酒と大吟醸酒の製法および精米歩合基準を満たします。

<純米吟醸酒>

  • 原料は米、麹菌、水のみ(純米酒)
  • 吟醸造りで、精米歩合は60%以下(吟醸酒)

<純米大吟醸酒>

  • 原料は米、麹菌、水のみ(純米酒)
  • 吟醸造りで、精米歩合は50%以下(大吟醸酒)

おわりに

本記事では、日本酒の製造工程から種類、さらには焼酎との違いに至るまで、日本の伝統酒についての基本的な知識を解説しました。

日本酒は、その製法の細部にわたるまでのこだわりが、多種多様な風味や特性を生み出しています。

この情報が、あなたの日本酒に対する理解を深め、次にお酒を選ぶ際に役立つことを願っています。

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